缶ジュース

 ペットボトルが出回る前、缶入りジュースというものがあった。

 缶というのは普通、缶切りでギコギコとふたを切り開けるものだった。あるいは、コンビーフ缶のようにクルクルと巻き取って開けるものだった。パッカンはまだ無い。

 ところが、缶ジュースはまったく違った。プルトップはまだ無い。では何が違うかというと、フタをあけないのだ。缶ジュースには専用の穴あけ器があって、これで小さな穴をあけそこからジュースを飲むのだ。穴開け器は缶切りと同じようにてこの原理にしたがって作られている。缶の縁に支点を引っかけ、(力点を)押し倒すことによって(作用点が)プシュッと穴をあける仕組みになっている。いえ、そんな大げさな構造ではありません。とにかく、フタはあけずに、フタに穴をあけるのが珍しかった。

 大事なこと、それは穴をふたつ開けること。ひとつだけだとジュースが出てこない。飲み口を六時の位置にあけ、もうひとつ、空気の取り入れ口を十二時の位置にあけるのだ。これは理科の勉強になります。

 なつかしいけど、やはりペットボトルのほうが便利だな。スクリューキャップで飲み残しができるのがなにより。金属臭やら酸による腐食がないのも良い。