煙突

 昭和が去って消えたもののひとつに煙がある。

 工場の煙突。勢いよくモクモクと吐き出す真っ黒な煙は高度成長のシンボルでもあった。やがてこの煙は大気汚染の元凶とされ色を無くしていった。多くの煙突は残っているが使われていないものも多い。使われていても、黒い煙を吐き出す煙突は皆無といってよい。

 都会では家庭にはなかったが、小中学校には石炭ストーブがあった。ブリキの煙突が教室の中に設えられていた。石炭が姿を消し、石炭ストーブもなくなった。

 焚き火。落ち葉を掃き集めての焚き火、廃材を集めての焚き火。地面に直に燃やすこともあれば、穴をあけた石油缶で燃やすこともあった。これもまた、煙が迷惑になるとか、火災の危険とかいわれ自粛されていった。とりわけ、ダイオキシンうんぬんという嘘か誠かわからぬ規制の中ですっかり姿を消してしまった。

 暖房は効率的になり、空気も(一見)綺麗になった。だけど、なんとなくこころの中が寒々しくなってきたような気がしてならない。