アスパラガス

 いま、アスパラガスといえば、緑色の新鮮な野菜として、ごく普通に生もしくは茹でて食べている。

 が、昭和のアスパラガスは白かった。生では売られておらず缶詰になっていた。

 白いのは日に当てないため。現在のウドやモヤシのように日に当てずに育てていた。わざわざ手間をかけてそうしていた。

 缶詰はパッカンと開くタイプではなく、缶切りでギコギコ切って開ける。明けるのは上ではなく底。アスパラガスは根本が底になるように缶に入っている。だから根本側、すなわち底を開ければ取り出しやすい。上を開けてしまうと、アスパラガスの頂部をつかむことになり、すぐにちぎれてしまう。

 缶詰のアスパラガスにはやや独特のにおいがあった。これを嫌がって嫌いだというひともたくさんいた。ということは、このにおいが気に入った熱烈な愛好家のたくさんいた。

 かくも個性ある食べものであった。なにげなくサラダに入っているようなものではなかった。だからといって、どおってことないが……。