角砂糖

 角砂糖を見かけることも少なくなった。かつては「お砂糖、おいくつ?」なんて問いかけもあったが最近耳にすることはない。

 砂糖壺に入ったグラニュー糖よりも角砂糖のほうが上等と思われていた時期もあった。確かにグラム単価は角砂糖のほうがぐんと高いだろう。

 だけどそれだけではなく、共用の容器から自分用に必要なだけ取り出すよりも、最初から自分専用に用意して貰うほうが待遇が上、と思われていた節がある。おもてなし上は角砂糖のほうが上位とみなされていたようだ。

 だけど、角砂糖には不具合もある。割高な価格もそのひとつだが、それ以上に、好みの量だけ使用することがむずかしいという大きな欠点がある。〝さじ加減〟ができないのだ。どうしてもという場合は、囓りとって調整したり、スプーンに乗せたまま溶かして、適量が溶けたところで引き上げる、なんてわざもあった。また、大概はふたつ供されるが、あまったものはどうするのだろう? 専用ということを大事にすれば次のひとに回すことはできないだろう。

 そんな不具合が災いしたのかどうか、いつの間にか角砂糖は廃れてしまった。

 糖分過多による太りすぎや心臓病などの予防のため、適量をはかれるグラニュー等へ心が移っていったのだろうか。

 目立たないけれど、角砂糖も昭和の象徴だった。喫茶店や家庭でのおもてなしの名脇役であった。