物干し

 昭和の時代は、一戸建て住宅もたくさん建っていた。一戸建てといっても豪華なものではなく、質素な平屋が多かった。

 二階建てや集合住宅はさほど多くはなかった。であるからベランダというものも多くはなかった。一方、一戸建てには狭いながらも庭というか通路というか、少しばかりの空き地がついていた。

 ということを踏まえて洗濯物の干しかたの話です。

 いまは洗濯物はベランダに干すのが一般的になっていますが、昭和の時代にはベランダはなかった。一方わずかばかりでも庭があった。

 その庭に腕木のついた柱を二本立てる。その腕木に物干し竿をわたし、そこに洗濯物を干す。というのが一般的だった。

 柱には腕木が二三段ついていて、段数分の物干し棹を掛けることができた。

 腕木は結構高い位置、届かないくらいの高さのところについていた。なので、物干し竿の上げ下ろしには腕木のついた竹竿が使われた。この腕木に物干し竿の片方を掛けて持ち上げ、柱の腕木に掛ける。続いて反対側を持ち上げ柱に掛ける。

 干すほうはともかく、取り込み作業は結構、こどものお手伝いとして要求された。

 いつのころか、平屋の屋根も上に物干し台を作ることが流行った。物干し台へは家の外から専用の階段で上がるようになっていた。この物干し台はその名のとおり、洗濯物干し専用であったが、ここから近所を見渡し、感慨に耽るのにも適した場所であった。

 そしてどちらも滅多に見ることがなくなってしまった。