お得な自販機

 いつもの昭和よりは少し後、西暦で言うと70年頃、ロングサイズのピースが百円のころの話です。

 近所に煙草の自販機があった。まったくの偶然だが、こんな事象(業者にとっての不具合、利用者にとっての好都合)があることを知ってしまった。

 それはこんな具合である。百円の煙草を買う際に、まず十円玉を五枚投入する。そのあとで五十円玉を投入する。すると、百円のランプがつき、あとから投入した五十円玉が戻ってくる。つまり、十円玉五枚で百円入れたことになる。実際、これで百円の煙草が出てくる。五十円得したことになる。

 こちらは何も悪いことはしていない。ちゃんとお金を入れたのに、機械が要らないといっているのだからそれ以上どうしようもない。

 というのを口実に、いつも五十円で百円分の買い物をしていた。

 もっともこれは、その自販機だけの特有の不具合だったようだ。でも、なんとなく、昭和の機械らしい気がしなくもない。いまの時代、こんな甘い機械は作られていないだろう。