航空バッグ

 航空バッグなるものがあった。日本航空だのエアーフランスだのパンアメリカンだのと航空会社のロゴが大きく描かれた、ナイロン製のショルダーバッグである。

 パック旅行を予約したり、航空券を購入するともらえる物らしい。飛行機に乗ることがまだ珍しかったころ、もの自体は大したことないが、一種のステータスを示す品である。

 が、実際に持っている人の多くは、飛行機に乗ったことの無いひとたちである。遠足などにもってくる子どもも少なくなかった。かく申すわたしもひとつ持っていた。余談だが、本当にステータスの高いひとたちはこのバッグを持ち歩くことはほとんどなかったようだ。

 飛行機に乗らない人はどうやって手に入れたのか。お菓子などの景品として配られていたのだ。チョコレートの包み紙を何枚か集めて送ると抽選でもらえたりした。なのでステータスもへったくれもないのだが、航空会社のバッグというのがなんとなく格好良く見えたものである。あきらかにかっこよさの基準が違いましたね。まあ、さほど無理したり見栄をはったりしなくとも、格好良くなることができた、と言えなくもありませんが。

 いまの時代のブランド・バッグとはまたひと味違う流行だった。