角砂糖

 昔はちょっと気取った喫茶店や、高級をうたう三流の喫茶店では、コーヒーや紅茶の受け皿に角砂糖が乗せられて出されることが多かった。

 なので、砂糖を「ひとつ」「ふたつ」と数えるのも珍しくはなかった。スプーン1杯、2杯ではなく、角砂糖ひとつ、ふたつである。「お砂糖、おいくつ?」なんていうのが気取った言いかたとして流行ったりもした。

 二個ついてくることが多かったが、小さめの角砂糖のほうが上品に見えるらしく、気取ったところでは、小さな角砂糖が三つ出されることもあった。三つというのは、甘さを細かく調整するためではなく、上品感すなわち見た目の問題であった。

 その角砂糖も見かけることが少なくなった。昔ながらの砂糖壺に戻ったり、細長い紙の筒に入った砂糖が幅をきかせるようになってきた。

 痩身志向で糖分を控える人が多くなり、砂糖そのものが使われなくなってきたことにも角砂糖衰退の原因がありそうだ。

 出してしまった角砂糖は使われずに回収しても使い回しはしづらい。砂糖壺ならいる分だけ使うのだから問題はない。紙筒入りの砂糖なら回収して使い回しもできる。砂糖を使う人が少なくなり、余ることが多くなると、あまった砂糖を再利用できるほうが無駄がない。そんな事情も関係あろうか。