男性化粧品

 子どものころ、おとなのおとこがつける化粧品は整髪料くらいのものであった。その整髪料も、ポマードかチック(実は、その違いを知らないのだが)だけ。メーカーは断然、緑の箱の「柳屋」、だったと思う。

 四十年代半ばころだろうか、資生堂からMG5という男性化粧品のシリーズが発売された。コマーシャルには顎のしゃくれた団次郎が起用された。いわゆる、美男子ではない、個性豊かなモデルである。これも初めてに近い試みではなかろうか。因みに、団次郎の本名は村田英雄。とうぜん、本名を使うわけにはいかないので芸名をつけたとのこと(念のため、村田英雄は、三波春夫と人気を二分していた流行歌手。大スターです)。

 その後、団次郎よりも遙かに個性的なチャールズ・ブロンソンをCMに起用したマンダムが発売され、男性用化粧品はすっかり定着する。CMソングも一世を風靡し、決め台詞の「うーん、マンダム」も世にあふれました。

 このように、男性用化粧品が話題となった時代もあるのです。以後、ひげそりにもシェービング・クリームをつかったり、はたまた、電気カミソリなんてものも出てきました。昔は石鹸を使っていた洗髪もシャンプーだ、リンスだのを使うようになり、はたまた、ボディーソープなんてものまで定着する始末。

 これを軟弱と嘆くこともありませんが、こんなところでも、新商品、多様化が広まりました。一方、柳屋のポマードやチックはどうなっているのでしょうか。多分、まだまだ、根強い愛用者はいるような気もします。ただし、わたしより上の世代に限られるでしょうが。