角砂糖

 昭和の時代、お洒落な砂糖といえば角砂糖であった。お洒落というより、気取った砂糖というほうが良いかもしれない。

 コーヒーや紅茶が出てくると「いくつ?」と尋ねるのが気の利かせかたであった。いくつというのは、角砂糖の数である。

 当時はまだ、ブラックでたしなむ人はさほど多くなく、また糖分による肥満もあまり気にされていなかった。なので、コーヒーや紅茶には砂糖を入れるのが普通だった。

 粉末状の砂糖をスプーンですくって入れるのが普通だが、気取ったところでは角砂糖が使われた。これを小さなトング上のものでつまんでコーヒーにいれる。あるいは喫茶店などでは、コーヒーカップの受け皿に二つほど乗せて出されることもあった。この場合はスプーンでコーヒーにいれる。スプーンごと沈めるのが上品だとかそうではないとか。

 が、そのうちに糖分が肥満の原因と言われるようになり、砂糖を敬遠する人も増えてきた。糖質を含まない人工甘味料を好む人も現れた。人工甘味料は小さな紙包みに入ったものが多く用いられた。それにつられてか、砂糖も紙包みいりのものが出回りはじめた。

 かくして、砂糖そのもの需要が減ったこと、紙包み入りが出回りはじめたことにより、角砂糖の需要が極端に減ってしまった。いまでは滅多に見かけることがなくなってしまった。