半ドン

 昭和についてあれこれ書いているが、わたしにとっての昭和とは二、三十年代を意識している。が、今回取り上げる半ドンに関してわたしの実体験はこれとかなりずれている。

 半ドンというのは、半日だけ仕事をしたり、授業を受けることこと。ドンというのは正午になった空砲の音、つまり正午の時報のことであろう。そのドンまでの半日だから半ドンと言ったのだろう。と、言わずもがなの説明をするのは半ドンという経験が無いだけでなく、言葉すら知らない世代が現れているためである。

 仕事で言えば、月曜から金曜までは朝から夕刻まで働き、土曜は正午まで仕事をする、というのが当時の標準的な労働時間であった。土曜は休みではないが、午後からは解放されることになる。

 私自身について言えば、学校はすべて土曜半ドンだった。それが、造船会社に勤めると最初から週休二日だった(若干自信なし)。十数年就業し週休二日は当たり前のことと思っていた。

 ところが転職した会社は週休二日ではなく、隔週土曜は半ドンだった。一気に時代を十数年戻ってしまった。土曜日に出勤してみると世の中半ドンのひとは結構いるようで、週休二日が大勢になっている訳ではないことを知った。

 余談だが、半ドンというのは、土曜の昼に都心で解放されるのだから結構使い道がある。

 で、平成になってもしばらく隔週半ドンが続いていた。この記憶は自信あり。というのは、昭和天皇の逝去の報が伝わったのが土曜日の午前中、わたしはそれを隔週半ドンで出ていた職場で聞いたのを覚えているから。

 結局、半ドンは昭和一杯生き続けたのだろう。