G パンの裾

 昭和に時代、ジーンズのことをGパンと呼んでいた。どうしてそんな呼称がひろまったのかは良くわからないが。

 で、Gパンの裾である。Gパンというのは万人に会うように丈はかなり長い目に作られていた。いまは、購入時に裾の長さを調整して、長すぎる分を切り落として、裾がほぐれないように少し折りかえしてミシン掛けするのが普通である。わたしなど、この切り落としが半端でなく長く、無念に思うこと毎度である。

 ところが昭和の時代はそうではなかった。裾上げする店はごくごく限られていた。多分、特殊なミシンを持つ店が少なかったのだろう。

 ミシンのない店ではどうするか? 答えは……、なにもしない。長いままのGパンを買って帰るのである。

 むろん長いまま履いたのでは長袴になってしまう。なので、裾はまくり上げるのである。何重かに折り曲げるのだ。これが普通の履きかただった。この折り曲げ幅や回数にこだわるひともいた。かっこいい、まくり上げかたがあったようだ。むろん、おそらくは、かっこよさは独りよがりであっただろうけれど。

 まだ舗装が不完全な時代、折り返しのなかに小石や砂が入って往生することもあった。ほどいてまた、まくり上げ、である。それがまた、Gパンの楽しさでもあった。