豆腐

 昭和の豆腐と現在の豆腐はちょっと違っている。

 昭和の豆腐は、その日に作られたモノをその日もうちに食べる。
日持ちはしないし、パック詰めもなく、冷蔵庫も普及していないので。

 昭和の豆腐はみな四角かった(ざる豆腐なんて……)

 昭和の豆腐は豆腐屋でつくり、豆腐で売っていた。

 昭和の豆腐は鍋を持って豆腐屋に買いに行った。
鍋に水をいれ、そこに豆腐を浮かせてそろりそろりと持ち帰った。

 昭和の豆腐は、縦横に切り、水を張った深皿に入れれれて食卓にのぼった。

 昭和の豆腐を食べる時は、(豆腐の上に直接醤油をかけるのではなく)深皿からすくった豆腐を小皿に入れた醤油に(刺身と同じように)つけて食べた。豆腐に直接醤油をかけると、水で薄まったり、豆腐に染みこんだりしてしまう。

 とまあ、豆腐ひとつをとってもかくもちがうものである。