計算尺

 昭和の時代、パソコンなんてものはなかった。当然、表計算ソフトもない。カシオが初めて電卓をつくり、キャノンやシャープ、オムロンが起きかけた。

 その少し前、計算に使われていたのは、なんといっても算盤。大きくはないが玉をパチパチはじく音がにぎやか。計算が追われば、傾けてガシャッと玉を下に下ろし、そして上段の玉の下に指を這わせてシャーとこすり上げる。懸命に手動で計算している雰囲気が伝わってくる。

 そして理系ではタイガー計算機。数字ボタンをセットしてハンドルをグルグル回し、回しすぎたところで一回もどると答えがでるという代物。ハンドルを回したり戻したりする度にガシャガシャとかチーンとか音がする。使ったことはあるけれど、じっくり見てはいないのでそのからくりはわからずじまい。

 もうひとつ、計算尺というものがあった。これは、対数をうまく使うことによって計算するもの。メモリを合わせるだけなので動きもなければ音もない。どういう風に対数を使って計算するのかは学んだことがあるがすっかり忘れてしまった。ケタ取りは別途暗算する必要があった。

 個人的には、高校までは無論筆算の世界。大学の卒論のときには高価な電卓を使うことができた。卒業して設計に従事したころには、ポケット型の電卓、それも関数付きもものを比較的手頃な値段で手に入れることができ、使い倒した。

 というわけで、算盤も、タイガー計算機も、計算尺も実務では使ったことはない。