扇風機のリボン

 扇風機はまだまだ貴重で、お店とか金持ちのお宅でしかお目にかかれなかった。丈夫そうな黒い重厚な製品である。

 が、日本の夏は暑い。しばらくすると一般家庭にも入り始めた。このころになると、作りは軽快になり、色も涼しげな淡色に変わってきた。

 新しい家電がいろいろと出始めたころだが、扇風機は動きのある珍しい機会だった。まずは羽が回る。回っている羽根を見ることができる。そして首を振る。首を振ると風の向きが変わる。これは画期的な出来事だったかもしれない。

 スイッチを入れれば、羽が周り首を振る。風がふいて、風向きが変わる。稼働していることは一目瞭然。なのに、どういうわけか、ガードにリボンが結ばれていた。もともとは、電気屋さんの店頭の光景だったのが、家庭でも採用されていった。少なからぬ扇風機—半数以上かもしれない—にリボンが結ばれていた。

 リボンは風になびき、首振りに追随する。だからといって、涼しくなるわけでもないし、清涼感が増すわけでもない。稼働していることを目視させるためでもないだろう。では、なんのためにつけていたの?