茶こしで紅茶

 家庭で紅茶といえばいまやティーバッグが主流のようだが、もう少しうまい紅茶を飲もうと思えば、葉っぱから抽出するに限る。

 ティーバッグがなかったころも、紅茶は葉っぱ(リーフティー)であった。ただ、入れかたちょっとヘンだった。

 茶葉を入れたポットにお湯を注ぎ、抽出が終わるまで数分待つのが本当の入れかたである。なに、別に気取っているわけでない。緑茶もそうしているでしょう。紅茶用のポットがなければ、緑茶用の急須でも土瓶で良いのです。要は、ポットの中で茶葉を泳がすことが大事なのです。

 そして、ポットからカップに注ぐ時に、ポットからあふれた茶葉がカップに入るのを防ぐために茶こし(ティーストレーナー)で漉します。急須のように、茶葉が流れ出ないような工夫がなされていれば茶こしは不要となります。

 とまあ、若干時間はかかるもののいたって簡単です。むしろ、このかかる時間は、ゆっくり優雅に待つという、贅沢な気分を味わうための時間なのかも知れません。

 ところで、当時の紅茶の入れかたはそうではなかった。一般家庭はもとより、コーヒー主流の喫茶店でもヘンテコな入れかたをしていた。

 それは、葉っぱをいれた茶こしをカップに掛け、上からお湯を注ぐという方法。けっこうたくさんのかたが経験されたことと思います。かく申すわたくしめもそのひとりです。

 上に書いたとおり、これは完全な間違い。これでは紅茶の色を出すのがやっと、味はでません。

 なぜ、こんなやりかたが流行ったのか。

 その当時であっても正しい入れかたを知っているひとはたくさんいたでしょう。彼らは、最後に茶葉を漉すために茶こしを使っていた。なので、茶葉が流通し始めた時に茶こしも出回った。

 さて、紅茶の入れかたを知らないひとはどうしたか。茶葉と茶こしを眺め考えた。そして、茶こしに葉っぱを入れ、上からお湯を注いだら紅茶らしい色がでた。茶こしをこういう風に使ってしまうのも極めて自然なことでしょう。飲んだこともないので味はこんなもんだと思ってしまった。

 こんなことろではないでしょうか。