都電の曲がりかた

 子ども頃、都電の分岐点で、どうして右や左へ曲がるのだろうと不思議に思っていたことがある。都電にハンドルはついていないので運転士が方向を決めているわけではなさそうだ。運転士はなにもせずとも自動的に方向が変わるようだ。

 単純な機械的な考えしか浮かばないわたしはこんな風に考えた。車輪の右側または左側にひとまわり大きなガイド輪がついていて、これによって方向を決めるのだと。確かにこの方法で右左のどちらかに曲がることはできる。ただし、右へ曲がる電車は何処へ行っても右に曲がる。左曲がりはいつも左。そこまでは当時も理解できた。そして、そうやっていけるようにルートがきまっているものと思っていた。

 むろんそんなことはありません。分岐点には火の見櫓のような塔が立っていて、操車が目視でポイント切り替えていたようです。と、いうことに気がついたのは、都電が廃止になって大分経ってから。何ともまあ……。