ヒコーキからのビラまき、アドバルーン

 むかしは宣伝にアドバルーンがよく使われていた。気球のような大きな風船が空に浮いています。風船の下には宣伝の文言が書かれた大きな短冊状のきれがぶら下がっています。気球と違って、空にぽっかり浮いているわけではありません。ロープでしっかりとつなぎ止められています。風船の中は、おそらく高価なヘリウムガスではなく水素ガスだったのでしょう。結構、危険だったのですね。

 むかしの特徴ある宣伝方法のもうひとつはヒコーキからのビラまき。これは低空で飛ぶヒコーキ(多分セスナ機)から、葉書大ないしA4大くらいの宣伝ビラがまかれました。不思議なもので、宣伝の内容に興味はなくとも、空からビラが降ってくると夢中になって拾い集めるものです。大概のひとは一枚だけでなく何枚も持っています。色違いはあるけれど内容はまったく同じなのに。バラバラにならずに束になったまま落ちてくるのを拾うとなぜか得したような気分になりました。

 子どもはよろこぶけれど、いやな気分になる大人もいました。当時の大人は空襲経験者。空からものが降ってくるのは確かに怖い。それはさておき、

 飛行機のチャーター料やらビラまき料(窓から人力で巻いていたのでしょう)はあまり高くなかったのではないでしょうか。ちょっと大きいかなといった程度の商店でもよく利用していましたから。

 いまになって思えば、空から降ってくるビラはかなり迷惑なものですよね。宣伝とはいえ、要するに紙ゴミが降ってくるわけですから。庭や道路、屋根の上にゴミが降り注いでいるようなものです。洗濯物にはり付いたらかなり迷惑です。自動車の空気採り入れ部を塞いでしまえば故障の原因に。だけど、当時そんな苦情は耳にしませんでした。公害、すなわち公共がこうむる害というものについての認識が薄かったからでしょうか。いま、こんなことしたら大変でしょうね。