店に入る挨拶

 昔は住宅兼店舗は当たり前だった。で、混雑する時間帯以外は、店に人が居ないことも珍しくはなかった。

 そんなときどうするか。なんと言って店に入り、店番のひとを呼び出すか。

 小学校低学年までいた足立区千住では「ちょーだい」と言うのが普通だった。〝頂戴〟である。品物を買うのに頂戴はおかしいかもしれないがこどもの言葉としてはそれが普通だった。

 ところが、引っ越した大阪でそんな言葉を発すると笑われた。では、関西人はどう言うか。なんだけど、残念なことに覚えていないのだ。というより、見いだせなかったというのが正しい。注意深く観察していたつもりなのだが、多数解を見つけ出すことはできなかった。いつもなんて言おうか悩んでいたことだけは覚えている。多分、「すいませーん」とでも言っていたのだろう。

 今になって思えば、「お邪魔します」ではちょっとへりくだりすぎ、「ご免下さい」あたりが正解でしょうね。「たのもー」「どーれ」は好い感じだが、これは時代劇だけでしょうね。

 もっとも、いまの世の中、店にはほぼ必ず店員さんがいるし、いなくても入口の赤外線センサーが反応して、奥にいる人に知らせてくれる。客の側から呼びかける必要はほとんど無くなった。

 このことは、気の弱いわたしには好ましいことなのだが、一般的には、コミュニケーションの衰退、といったことになってしまうのだろうか。