知らなくても構わない?

 小学校高学年のとき、担任の推薦みたいなことで、「自由自在」という参考書を使って勉強していた。副読本でもなく、宿題、課題でもない。むろん、中学受験を目指していたわけでもない。特に熱心だったのが国語。ただなんとなく、ページを開いて暗記していた。

 教科書には出てこない特殊な感じの読みかたなどを覚えた。行脚、行灯、発足、早急、……。教科書には出てこないので、試験にも出ない。でも、覚えただけ賢くなったような気がする。

 社会に出て、上にあげたような漢字を読めないひとがかなりいることに驚いた。平気で「そうきゅうに」なんて言っている。

 でも、よくよく考えたら無理もない。結局これらについては、その後、一度も習わなかった。小五、小六で自主的に勉強していなければ知る機会もなかった。「自由自在」さまさまである。

 が、もうひとつ踏み込んで考えると、ということは知らなくて当然。「はっそく」「そうきゅう」が正しい読みかたになっているのかもしれない。せっかく覚えたことが、かえって余計なことをしてしまったことになりかねない。これは良いことなのか、そうではないのか?