冷凍みかんとゆでたまご

 汽車に乗る時のおやつの定番があった。まだキオスクという名のつかないころの駅の売店で売られていた。

 それは冷凍みかんとゆでたまご。どちらも赤いネットに入って売られていた。どうして蜜柑と卵なのか。良くわからないが、おそらくは、日常よりはちょっとだけ贅沢だけど、かといってさほど高いものではなかったからだろう。

 どちらも、赤いネットの中に数個入っていたが、目的地に着くまでに食べられる量だったのだろう。もちろん、卵のコレステロールなんて気にしなかったころの話である。

 蜜柑の皮や卵の殻はどうしていたのだろう。窓から捨てていたのかも知れない。無論、特急でも窓は開いた。卵の殻は床に捨てていたのかも知れない。いや、そうそう、当時の汽車には灰皿が付いていた。そこに捨てていた可能性も高い。

 汽車の中で、冷凍みかんや、ゆでたまごを食べるのはありきたりの光景で、見慣れていたはずなのだが、詳細を思い出すことはできない。これも不思議なことだ。