大黒柱

 一家の大黒柱はお父さんだった。三世代家族の真ん中、お父さんが家族の中心だった。といっても家族を取り仕切っていたのではない。家族を取り仕切っていたのは、お母さんだったかもしれない。

 お父さんが中心だったのは家計の話。お父さんひとりが、三世代分の生活費を稼いでいたのだ。お父さんひとりの給料で一家六七人を養っていたのだ。

 お父さんは大変だ。だけど、そのために、家族全員が陰に日向にお父さんを支え盛り立てていた。仕事に専念できるように協力した。実態は別として、一家の中心として祭り上げていた。

 家事や子どもの教育はお母さんの役割だった。子どもたちはお父さんより出世するように勉強に励んだ。

 ゆがんだ役割分担だったかもしれない。

 いまでは、お父さんひとりに経済的役割を任せる家庭も少なくなってきた。そして、お父さんの権威も失墜してきた。いや、お父さんの権威が失墜したというよりも、家族の一体化が薄れてきたのだろう。家族一丸となってというよりも、それぞれがそれぞれに、という風潮になってきたのだろう。それはよいことでもあり、また……。