ロシア民謡

 健全な若者たちはよくロシア民謡を唄った。

 ロシア民謡もまたダークダックスが普及に尽くしていた。ダークダックスというのは一時期の健全さの推進者だったようだ。そんなこと考えたこともなかったが。山もロシア民謡もダークダックスが引っ張ってきました。ダークダックスは健全さこうじのために大いに尽力した。

 ロシア民謡は、合唱に適していた。なので、ユースホステルやキャンプファイアなど、健全な集いで良く唄われた。健全な若者が集う歌声喫茶でも、ロシア民謡は圧倒的な定番であった。

 ロシア民謡は、仕事の歌で有り、恋の歌で有り、人生の歌でもあった。どれもみな、健全な若者の思考の対象であった。

 そんなロシア民謡であるが、いまはあまり耳にしなくなった。

 そもそも、ロシアが共産の国ではなくなり、力を合わせて仕事をするなんてことがなくなってしまった、ということもある。でも、それがロシア民謡の衰退に大きな影響を与えているようには思えない。それよりも、

 それは、カラオケに押され、声を合わせて唄うことが少なくなったから? それとも、仕事や人生を考えるのはダサイから? もしくは、考えていることをひとに知られるのはダサイから? あるいは、恋も展開方法が違ってきたから? 重厚な響きが軽い世の中に合わなくなってきたから?