マドロス

 かつての日活アクションなどで、マドロスがたくさん登場した。美空ひばりの歌にもマドロスさんはたくさん登場した。

 マドロスさんというのは船員さん、船乗りさんである。大概は外国航路の船に乗り、港から港へと渡り歩く。それがかっこよかったのだろう、多分。

 ところで、そのかっこいいマドロスさんなのだけど、船の中でどんな仕事をしていたのだろう。それが良くわからない。大概は客船ではなく貨物船に乗っていた。

 であれば、運転要員か機関要因あるいは厨房関係か。うーん、どうもそうではなさそうだ。アクションスターがそんなことうやりそうにもない。船長でもないだろう。アクションスターがそんなことできそうにもない。

 荷物の運搬に携わる沖仲仕は港にいればよく、船に乗っていくことはない。なら、港で荷物の上げ下ろしを管理する人だろうか。これはあり得るな。みずからが荷役をするわけではなく、大事な荷物の管理をするのが仕事。仕事柄、荒々しくもなり、ややアウトロー的な人物設定にもあっている。

 が、一つ問題あり。荷揚げの管理が仕事なら、航海中は暇だが、船が港に着いたときは滅茶苦茶忙しいはず。高価な接岸料(停船料)を無駄にしないためにも、せっせと荷揚げに励み、済んだらすぐに出港するはずだ。港で遊んでいる暇はない。

 これでは、アクション映画が成り立たない。本当は、どんな仕事をしていたのだろうか。もっとも、日活アクション映画にリアリズムは必要ないのだろうけれど。