普段着

 父は会社勤めをしていた。仕事を終えて帰宅するとまず着替える。大概は、着物つまり和服に着替えていた。和服といってもシャキッとしたものではない。よれよれと言っては言いすぎだが、まあ、そんな感じのしれっとした肌合いのきのもを着ていた。着物の下は、夏はステテコ、冬は股引。上半身は覚えていない。それに黒足袋を履いていた。

 それがくつろぎにスタイルだった。和服というと構えてしまいそうだが、決してそうではなく、これが一番安心できるし楽なかっこうだったのだろう。室内着かもしれないが、それでもまあ、そのまま、ひとに会えるかっこうでもあったようだ。気軽なお客さんにはそのまま対応していた。

 いまでは、よそ行きとして和服を着るひとはいても、家に帰ってくつろぐために和服に着替えるひとはほとんどいないだろう。

 いつごろからかわってしまったのだろう。世代で変わったのだろうか、それとも時代で変わったのだろうか。