焼酎

 いま、ごく当たり前のように、なんら躊躇することなく焼酎が飲まれているが、かつてはそんなことはなかった。焼酎がなかったわけではない。焼酎はしっかと存在していた。

 が、焼酎は危ないお酒という認識があった。いや、おそらくは今も昔も変わってはいないだろう。ひとびとの認識が変わったのだ。

 かつての焼酎は〝酔うため〟のお酒であった。酒というよりもアルコールといったほうが良いかも知れない。日本酒に比べて安かった。なので、味わうためではなく、酔っ払うための飲み物としては焼酎のほうがコスト・パフォーマンスに優れていた。乱暴かつ失礼な言いかたをすれば、焼酎は貧乏人が酔っ払うための酒だった。

 事実は別として、一般的な認識はそうだった。なので、危ない酒とみなされていた。

 ところが昭和の終わり頃から少し様子が変わってきた。焼酎のお湯割りに人気が出始め、これに梅干しが加わったりして、焼酎を飲むひとが増えてきた。やがて、炭酸割りが出回り、なんとかハイやらなんとかサワーという名前がつくと,爆発的に売れ始めた。いまや、ごくごく普通に飲まれている。かつての危ないイメージはどこへやら、いまや、健全な若者も、女性からも愛されるようになった。一方でそうとうに高価な焼酎も現れ、人気は多角化している。世の中、いろいろと変わるもんだ。