消えた商売

 以前とりあげたくずやさん/ばたやさんのほかにも、今となってはほとんど見かけることの無くなった商売がある。

 押し売り。歓迎されざる商売だがごく普通に存在した。漫画や落語のマクラにもちょくちょく登場した。訪問販売の走りともいえようか。

 売るのはゴム紐だとかタワシ、はぶらしといった廉価で多くは品質の悪い商品。どうしてこういった品揃えになったのか良くわからない。多少なりとも購買欲をそそりそうなものを売ればもう少し楽に仕事ができたであろうに。

 漫画で良く出る場面は、購入をことわると態度が豹変する押し売り。大概は「きのう刑務所から出たばかり」と言ってすごむ。怖くなって買う。なので商品はなんでもよい、ということのようだ。

 街頭写真とでもいおうか。どう呼んでいたのか記憶がない。これは道ばたで遊んでいる子どもの写真を勝手に撮って、後日現像したものを親に売りつける商売。カメラがまだ手頃ではなかったころの話。こちらは、押し売りとは違って、購買欲をそそる商品だったようだ。ただし、カメラという高価な品物を持っていないとできない商売で、しかも、売れないかもしれない写真を現像・焼き付けしなければならないといった、リスクのある商売でもあった。

 傷痍軍人。これを商売というのは不謹慎かも。戦争で不具になってしまった軍人さんである。なぜかみな、白い着物を着て、アコーデオンを弾き、施しを得ていた。投げ銭ではなく、ほどこしである。

 みな、いつのまにかいなくなってしまった。なぜ?