走る前のサロメチール

 サロメチールという薬があった。いや、影は薄くなったような気がするが、いまもあるだろう。

 メントールの入った筋肉疲労回復剤だったように覚えている。勘違いであればお許しを。

 疲れた疲れたといってないで、疲れをさっさと取り除き、あしからまた元気に働こう。そしてきょうより素敵な明日を築きましょう。そんな時代背景に即した薬のように思われる。

 筋肉疲労回復剤。これは筋肉痛の薬とは違うように思うのだがどうなんだろう。疲れを取るのと痛みを和らげるのでは異なるように思うのだが。

 で、いまの時代、インドメタシンやらなんやら、筋肉痛、肩凝り、腰痛の薬は多々出回っているが、筋肉疲労回復をうたった薬はあまり見かけないような気もする。探しかたが足らないのだろうか。

 が、それにしても、疲労回復剤である。筋肉増強剤ではない。なんだけど、むかしの運動会では走る前にサロメチールを脚に塗りたくるひとが少なくなかった。すうーっとして、早く走れるような錯覚に陥ったのだろうか。

 運動会、走った後ではなく、走る前のサロメチール。運動会にはサロメチールのにおいがつきものだった。これもまた、昭和の風俗であろう。