若い根っこの会

 若い根っこの会というのがあった。いや、いまもなおあるのかもしれないが、会の名を耳にすることはない。

 若い根っこの会というのは、よくは知らないのだが、集団就職で都会に出て来た若者たちが、就職先の都会で集うための会のようだ。

 高度成長の時代を背負う若者たちであるから、社会もかれらを応援する。故郷を離れ、慣れない都会でひとりで暮らし、一生懸命働き、日本の高度成長に貢献する。模範的な青年像である。そのため、紅白歌合戦など、マスコミにもしょっちゅう登場していた。保守政党の票田でもあったようだ。

 その根っこの会の影が薄くなってしまった。そもそも集団就職というものが減ったことに原因があるのだろう。また、いっぽうで都心に出てくることが一世一代の大仕事でもなくなった。気軽に故郷と都心を行き来するようになった。覚悟を決めての状況ではない。なので、特別な会で集う意義も薄れてきた。あるいは集うこと自体が好まれなくなったのかもしれない。

 都会と故郷が近くなり、集団より個を好むようになり、保守政党指示一辺倒ではなくなった。みずからも会を必要としなくなり、また、(これまで会を持ち上げてきた)社会にとっても、もはや会の利用価値が薄れてしまったようだ。

 かくして若い根っこの会は世間の目に見えなくなってしまった。