子どもは地域で

 いまの時代、子どもを育てるのは親だけになってしまったらしい。いや、子育てを放棄してしまった親もいるようだ。学校や塾に責任を押しつける親もいるそうだ。

 昔は、親も学校も、そして地域でも子どもを育てた。親と学校はさておいて、地域に注目。

 かつて子ども達は路地を遊び場としていた。路地には住民がいた。よその子の親であったり、老人であったり。路地の住民が子ども達を見ていた。ただ見ていたひともいれば、見守っていたひともいる。なかにはめったやたらと叱りつけるひともいる。

 そんなひとたちに守られて子どもは育っていく。逆にひとをみて(相手に応じて)泳いでいくことを覚えたりもする。

 逆にいまの時代の子供会のようなものはなかった。そんなきちんとしたものはないけれど、毎日毎日おとなに見守られていた。ときにはうっとうしいこともあったが。

 さらに、いまではいなくなってしまったが、町には集団就職で上京してきた青年がいた。彼らも寂しかった。故郷に残してきた弟・妹を思うこともあっただろう。彼らが、子どもたちと遊んでくれた。いや、彼ら自身も遊んでいたのだろう。親や老人ではできない、危ない遊びや少し悪い遊びを教わることもあった。

 こうやって、まわりの大人たちにもまれて子どもは成長していった。それがよかったのかどうかはわからないが、いまの世にそんな環境を臨むことはできない。