歯磨き

 子どものころ、朝起きてまず最初にやることは歯磨きと洗顔。そういう風に習ったし、そういう風にしていた。わたしだけでなくたくさんのひとがそれを習慣としていた。歯磨きは夜寝る前と朝起きてすぐ。それが普通だった。

 ちょっと考えてみれば、朝起きてすぐに歯を磨くことの無意味さはすぐにわかる。寝る前に歯を磨いてから朝起きるまでの間、何も食べていないのだから磨く必要はない。それなのになぜ? 歯磨き剤の清涼感が朝の目覚めにふさわしかったのかも知れない。いや、それ以上に、そういうふうにするものだ、という思い込みがあり、それを信じて疑わなかったのだろう。

 夜寝る前は良いとして、いま、朝起きてすぐに歯を磨くひとはどれくらいいるだろうか。いつからその無意味さに気がついたのだろうか。

 それにしても、昔はお上のいうことを信じて疑わないひとが多かった。