乾物屋

 乾物屋という店があった。本来は保存性を高めるために乾燥した植物性の食品を扱っていた。豆類や、干し椎茸などが主力商品だった。もちろん、乾燥した植物といっても米や麦は別。

 また、海産物は厳密には乾物の範疇ではないようなのだが、商売に厳密性を保つ必要は無い。乾物やでは、文字通り乾いた海産物も売られていた。海苔は当然、扱われていた。魚の干物は扱う店と対象外とする店とがあった。

 いずれにせよ、町内の商店街にはかならず乾物屋があった。

 そして、〝こんにち〟である。ご多分に漏れず、乾物屋もまたスーパーなどに駆逐されてしまった。そもそもの目的からして、保存に適した食品なので、スーパーではもっとも扱いやすい部類の品であろう。

 専門店として生き残りのための創意工夫はむずかしい商売かも知れない。でも、無くなってしまうのはやっぱりさびしい。

 高円寺純情商店街ねじめ正一さんの実家など、ぜひ残ってほしいのだが。〝もうすでにないよ〟なんてこのないことを祈る。