ジョギングの水分補給

 かつてジョギングをやっていたことがある。クツにしろウェアにしろ、今と比べれば随分と貧弱な時代だった。でもまあそれらはなんとかなった。

 どうしようもなかったのが〝水分補給〟である。いまはペットボトルというものがある。ところが当時は蓋が閉まり、持って走ってもあまり邪魔にならない容器というものがなかった。

 汽車で駅弁と一緒に売られていたお茶の容器。あれはこぼれないようにはできていない。ジョギングには使えない。

 我慢できなくなったら、自動販売機を利用するしかなかった。あるとき、当たり付きの自動販売機を利用したら一本当たってしまったことがある。その場で飲みたいものは既に買ったので、あとから飲むつもりで暖かいコーヒー缶を選んでしまい、苦労したことがある。当然ながら、持って走らなければならない。その缶が熱くて持っていられない。手を変えたり、シャツの裾で持ってみたり、ジョギングどころではなくなってしまった。

 ホースの水を勝手に頂戴し、ゴム臭さに閉口したこともある。畑のみかんを無断で頂戴し、手や口がベタベタになったり、かえって乾きを覚えてしまったこともある。

 閑話休題。いろいろ探したり試したり、最終的に使ったのは……。それは、マヨネーズのチューブ。蓋を閉めれば水が漏れることはない。口が狭いのが気になったが、走りながら飲むにはかえって都合が良かった。欠点は、容量が少ないこと、グニャグニャしてだらしないこと、見た目が悪いこと。そして、中の水が踊って、チャッポンチャッポンと音がすること。これは今のペットボトルでも同じこと。

 まあ、時代の違いといえ、思わぬところで思わぬ苦労をしていたのよ。