水分補給

 運動の途中に水を飲むことは固く禁じられていた。ハーフタイムには檸檬を囓って乾きをごまかすだけ、ほんの少し飲める水には塩が溶かされていた。たくさん飲めといっても飲めるものではない。乾きがとまるどころか咽が焼き付いてしまいそうになる。

 運動中に水分を取ってはいけない、なんてどこで生まれた〝大誤解〟なのだろう。これがため、脱水症状をおこして失われた人命も少なくないのではなかろうか。運動中に水分補給していたのはマラソンと相撲の力水くらいではなかろうか。

 80年頃になって、アメリカのカレッジ・フットボールの中継を観て驚いた。ベンチで選手達が水をガバガバ飲んでいる。そうだよなあ、失った水分は補給すべきだよなあ。さすが合理的なアメリカ人。

 やがて、作家ーのJリーグが始まると、ペットボトルがピッチ周辺にばらまかれ、試合の合間に選手が水を飲んでいる。

 保守的と(わたしが勝手に)思っている野球やラグビーでも水を飲むようになった。

 ようやくにして、間違った信仰が消えていった。めでたし、めでたし。日本ではJリーグが大いに貢献したように思われる。