タッパーウェア

 〝タッパーウェア〟をご存じのかたはどれほどいらっしゃるだろうか。

 主に冷蔵庫で食品を保存するためのプラスチックの密閉容器である。その容器を販売する会社の名前である。

 このプラスチック容器、いまでこそ、スーパーや雑貨店、あるいは百円ショップなどで普通に売られているが、当時は簡単に手に入るものではなかった。そもそも、スーパーはまだちらほらとしか存在しない時代であった。

 プラスチック密閉容器、イコール、タッパーウェアであった。

 タッパーウェアは一般の店頭では販売されていない。なので、そう簡単には手に入るものではなかった。なので、タッパーウェアを持っていることがひとつのステータスでもあった。プレイ土をくすぐる外国製品でもある。ただのプラスチック容器とあなどってはなりませぬ。

 では、どうやって手に入れるか。ホームパーティに参加してそこで買うのだ。だれか知り合いが主催するホームパーティに招待され、初めて買うことができるのだ。

 むろん、パーティの主催者になることもできる。段取りはすべてタッパーウェアがやってくれる。主催者は人を集め、会場を提供するだけ。いやいや、人を集め、会場を提供することが大切なのだ。誰でも出来ることではない。

 冷蔵庫の普及に伴い、タッパーウェアも急激に普及した。やがてはだれもかれもが所有するようになった。いったい、どれほどのパーティが行われたことやら。

 その後店頭売りの廉価な類似品が出回り、独占市場は崩れたが、タッパーウェア社は今もなお、健在のようだ。

 冷蔵庫、外国製プラスチック容器、ホームパーティ。ひとつの〝時代〟であった。