量り売り

 おでんや豆腐はナベを持って買いに行った。

 醤油やソースは一升瓶を持って行き、樽から注いでもらう。わたしは買いに行ったことはないが、お酒もそうだったかもしれない。

 味噌は秤で量って経木に包む。豆は枡ですくって新聞紙で作った袋へ容れる。

 いま、こんなことをするとエコだのなんだのと大げさに言われそうだが、当時はそんなことはまったく考えなかった。それしか持って帰る方法がなかったのだ。

 測るときは足し算だけ。目分量でどかっと積んであとは少しづつ足しながら調整する。置きすぎて減らすのはいけない。ほぼ、ぴたっと決まってから、ほんの少し付け足して測らずに渡す。単なる約束事なのだろうけれど、気前の良さが感じられてすがすがしい。

 まあ、とにかく売り手と買い手が顔と声を出し合って商いをしていた。まだまだ、うるおいが残っていた時代ですね。