車掌さん

 都電やバスには、がま口のような形をした黒い多いな料金鞄をぶら下げた車掌さんが乗っていた。出で立ちからわかるように、料金の回収が一番の仕事である。乗るときに売るのではなく、発車してしばらくしてから車内をまわり新しく乗ってきた乗客に切符を切って(売って)いた。これは強制的に売るのではなく、声を掛けるのは客のほうだった。客が自主的に買うような段取りになっていた。降りるときはこの切符を渡して降りる。切符を持っていないと降りられないのだ。なので、強制されずとも購入することになる。

 車掌さんは、切符の販売のほかにも、行き先や次の停留所の案内、細い道でのすれ違いやバックの誘導なども行っていた。ワンマンになるとこれらをすべてひとりの運転手さんがやらなければならない。アナウンスや料金の徴収方法についてはいろいろと工夫が凝らされるようになり運転手さんの負担を減らす努力が成されたが、すれ違いやバックは運転手さんがひとりでやっている。一番危険なことがひとりでやる作業として残されてしまった。大丈夫かいな。