朝顔

 昭和の時代、朝顔を備える個人宅が少なくなかった。朝顔、すなわち男性小用の便器である。

 豪華な邸宅ではない、質素な家でも朝顔のあるところは珍しくもなかった。もっとも、廊下の突き当たりに剥き出しでついていることも多かったが。金隠しのあるほうは個室しつらえだが、朝顔を剥き出しである。かく申すわが生家にも存在していた。

 あの貧しい時代にかなりの優遇措置つまり無駄な設備のようにも見えるが、どうしてあったのだろうか。また、時代が立つにつれ、どうして消えていったのだろうか?

 かつての存在理由としは、立ったまま和式で小用を足すのが難しかったためではなかろうか。朝顔は贅沢ではなく、衛生上の必要性から存在したのではなかろうか。

 ということであれば、洋式が普及すれば、朝顔の存在価値が減じてしまうことになる。