荷札

 昭和の時代、宅配便などという便利なサービスはなかった。荷物の配達は、郵便局または日通が一手に引き受けていた。

 それはともかくとして、荷造りには色々と決まりがあった。いや、本当は決まりかどうかは知らないが、みんなが守っていた手順があった。

 荷物はまず、包装紙で包む。この紙は新品である必要はない。旧品再利用は当たり前、ときには裏返して使った。宛名はこの紙に書く。そして、これに紐を掛ける。当時はガムテープがあったのかなかったのか、よく覚えていない。が、テープではなく、紐で縛った。一般的には麻紐を用いたが、デパートなどで使われていた紙紐でも得に問題はなかった(と思う)。

 この紐掛けの目的は、ひとつは荷物がバラバラになることを防止するためであるが、もうひとつ、副次的な意味があった。

 当時、荷物には荷札を二枚付けていた。荷札とは丈夫な紙の札で、上部に穴が開き、その穴は厚紙で補強されていた。そして、この穴に細い針金が巻かれていた。

 荷物を送る際には、この荷札に宛名を書いて荷物に取り付けた。さて、麻紐である。荷物に取り付けるには、荷札の針金を梱包用の麻紐(もしくは紙紐)に巻き付ける。これが紐掛けの副次的な役割である。

 紙に書いた宛名だけでは破れてわからなくなってしまう心配があったのか? あるいは荷札は、咄嗟に読み取ることができてしごく便利だったのか? そんな理由から荷札がつけれていたのだろう。あるいは単なる習慣、はたまた、意味のない規則だったのかもしれない。