荷物を預かる

 昭和の時代はいまのように個別配送が充実していなかった。荷物を配達していたのは郵便局か日通、そして盆暮れのデパートくらいのものである。

 そのころ、いまでは考えられないようなことが、ごく当たり前に行われていた。届け先が不在の場合、平気で荷物を近所に預けていたのだ。不在だと両隣、もしくは向かいの家に預けてそれでおしまい。配送業者はそれで配送が完了したことになった。頼まれたほうも疑問の余地なく預かり、正規の届け先の住民が帰宅すると荷物を渡しにいった。

 預かり先で預かった荷物を開けてしまったり、自宅へ届く荷物より預かる荷物のほうが多いと嘆いたり、そんなことがお笑いや漫画のネタになっていた。

 預かるのが当たり前、預けても安心、という風潮が当時はあった。今よりも近所づきあいが密だった。また、送り主や中身を詮索することに対する個人情報の保護といった観念もなかった。

 そういう時代と今とどちらがよいかというと、それはなんともいえない。それぞれに長短あり。昔がよかったなどとは簡単には言えない。