ひょうちゃん

 そういう名前があると知ったのは随分と後になってからのことです。だけど、ひょうちゃんそのものは子どものころから知っていました。

 ひょうちゃんというのは、崎陽軒のしうまい弁当についている陶器製の醤油入れです。ひょうたんの形をしているのでひょうちゃんと呼ばれたようです。栓が何でできていたかは覚えていません。たぶん、コルク栓だったと思いますが。

 ひょうたんのくびれが意外に便利で箸置きとしてつかっているひとも少なくなかったように思います。一家に何個かは在ったのでは無いでしょうか。そこまでシウマイ弁当が買われていたかというと、そうでもなさそうな気がします。節銀現象かもしれません。

 このひょうちゃんにいっとき、横山隆一の絵が描かれていたことがあります。毎日新聞に連載していた「フクちゃん」です。当時はフクちゃんも横山隆一も知らないひとはほとんどいなかったように思います。その後、鎌倉を代表し、またリードする文化人として活躍していました。夏に配る団扇や荏柄天神や八幡宮のぼんぼり絵も描いていたように思います。他界されて月日が経ちます。ご子息がどこかでお店をやってたり、かつて花見の宴を催した邸宅跡がスターバックスとして残っているようです。

 ひょうちゃんも横山隆一もフクちゃんも、それぞれ記憶から薄れていくのは、時の流れとして仕方のないことでしょうか。なんかさびしい気もします。

 このひょうちゃん、いまでもあります。シウマイ弁当にはついていないようですが、他の製品で見かけたように思います。本体はプラスチック製で、栓もプラスチックのネジ蓋です。