お父さんの夏の夕暮れ

 三十年代の前半から中盤にかけて家庭にテレビが普及していった。

 夏の夕暮れ時のお父さんの典型的な光景は、

 仕事を終えて帰宅するとステテコとだぼシャツに着替えます。やはりその頃から普及し始めた電気冷蔵庫からビールを一本取り出して、戸棚を開けてコップを持ってテレビの前に。

 見るのはもちろんプロ野球中継。ファンであろとアンチであろうとやっているのは巨人戦。左手でビールをちびちび飲みながら右手には団扇。準備途中の夕食をつつくことも。テレビは声を出してみる。応援したり、解説したり、罵倒したり。

 最近はこういう光景はめっきり少なくなりました。

 プロ野球の魅力が減ったというか、世の中多趣味になってきたため。

 プロ野球の中継が減ったため。

 いやいや、そんな時間に家に帰れるお父さんが減ったのが最大の原因でしょう。残業が当たり前になり、遠距離通勤も当たり前になって、夕暮れ時に帰宅できるお父さんなんて、ほとんどいないのではないでしょうか。