ラジオ・テレビ

 物心ついたころは、まだまだラジオの時代だった。そのラジオも一家に一台。家族みんなが同じ番組を聴いていた。子どもも大人が聴く人気番組に付き合わされた。子ども向けの番組は夕刻に放送されていた。この時間帯、おとなは仕事であったり夕食の準備でラジオを聴く余裕はなかった。また、外で遊んでいた子ども家に帰る時分でもあった。うまく回っていたのだろう。

 ぼつぼつとテレビが家庭に入り始めた。もちろん一家に一台、家族全員で同じ番組を観ていた。最初のうちは物珍しさもあって文句もでなかった。少し慣れてくると、チャンネル争いがはじまった。

 昭和四十年代の半ばころからであろうか、ラジオがパーソナルなものになりはじめた。テレビは相変わらず一家に一台であったが、ラジオは一人一台の時代になり始めた。深夜番組に夢中になるのもこの頃から。

 そして、テレビも一人一台となっていく。まだまだブラウン管の時代だが、画面は小さくなり、価格も下がっていった。テレビもひとりでひっそりとみる時代になっていった。

 やがて、テレビ離れもはじまった。

 液晶テレビが出回り画面の大型化がはじまると、また一家に一台の時代に戻ってきた。ただし、以前とは異なり、家族全員で観るようなことは減っている。多様化がはじまり、簡単に録画できるようになったこともあって、それぞれが観たい時に見たい番組を観るようになった。