トイレットペーパー

 昭和の時代にはロール状のいわゆるトイレットペーパーはなかった。いや、あったかもしれないが普及はしていなかった。家庭にまでは入りこんでいなかった。

 家庭で使っていたのは、落とし紙とかちり紙とかはな紙とか呼ばれていたものである。ロール紙ではなく、カット紙である。思い出せないのだが、大きさはB5くらであっただろうか。トイレだけでなく、いまのティッシュペーパーやポケットティッシュとしてもこれが使われていた。重ねて室内に置かれていたり、畳んでポケットに入れて持ち歩いた。ポケットの中では折り目がすり切れてボロボロになったりもした。

 切りそろえた新聞紙がトイレに置かれているご家庭もさほど珍しくはなかった。もっとも、わたしはそれで用を足したことはありませんが。

 それらがどういう順に置き換わってきたのかは思い出せない。テレビのモーニングショーが始まったころ、クリネックスティッシュが番組内でしきりに宣伝されていたのは記憶にある。モーニングショーが始まったころはまだ知られてはいなかった。それが、かなりの速度で普及していった。

 ポケットティッシュはそのあとだろう。これは、街頭で宣伝用に配られることによって普及していった。宣伝用に配られるのはいまも同じ。ポケットティッシュを使っているが、買ったことのないひとも多数いることだろう。わたしは緊急時(詳細は秘す)に購入したことがあります。

 さて、トイレットペーパーはどうだろう。推測だが、これはトイレの水洗化とともに普及していったのではなかろうか。新聞紙はもとより、従来の紙は水洗で流せない材質だったように思われる。それは流しちゃだめ、ということでトイレットペーパーを使わざるを得なかったのだろう。とくにロール紙である必要はなかったが、水洗化という進歩にともない、紙も欧米化することにあこがれがあったのかもしれない。