額入れ掲載

 昭和の時代、額縁に絵を入れてそれを部屋に飾っている家がたくさんあった。いや、いまでも絵や写真を飾っている家はたくさんあると思うが、当時とはすこし様相が異なる。

 違いのひとつはそうしている家の数。これはかつてのほうが遙かに多かった。

 違いの二番目。それは額縁の中身。それはまったくチープなものだった。カレンダーを切り抜いた名画の複製。雑誌から切り取った映画スターの写真。そしてお決まりの武者小路実篤の野菜絵のコピー。

 自作もなければ、本物もない。その辺に転がっていたものを切り取って額にいれて飾る。それもほとんどの家庭で。

 これを貧しさ、とみるか。ちょっと違うと思う。逆にこころのゆたかさがあったのではなかろうか。いいものはいい。それをいつも目にしていたい。

 本物でなくともまったく構わない。見栄とか外聞には関係なく好きなものを目につくところに飾っておく。これはやはりこころのゆたかさの現れであろう。ということにしておこう。