検印・住所

 本の話。昔は検印といのがあった。小さな紙一枚、一枚に押印し、それを奥付の上に貼っていた。著者はその押印した数で印税を得ていたという。串田孫一さんなどは、その印を手彫りで作っていた。なので、孫一さんの生の押印は(わたしにとって)宝物である。この検印が廃止されて久しい。著者手間が省けて良いのだろうけれど、つながりが減ってしまったような気がする。

 つながりと言えば、その頃の本は奥付には著者の住所がしばしば記されていた。住所といえば、人気の週刊漫画誌にも漫画家の住所が記されていた。これは奥付ではなく、それぞれの掲載ページの左右の欄外に「○○先生へ励ましの手紙を出そう」などと書かれ、その下に住所が記されていた。

 ずいぶんと呑気な時代だった。今は、著者の住所など載せている本はない。著者に確認したいことやそれこそ励ましは出版社気付けで送るのが精一杯。こちらもつながりをたたれてしまった感がする。