当直

 昭和の小学校や中学校には当直というものがあった。生徒の話ではなく、先生の話である。当番制で、何日かに一度、校内で宿直する。つまり、夜を学校で過ごすのだ。もちろん起きている必要はなく、寝ていて構わないのだろうけれど。坊ちゃんがバッタを蚊帳の中に放たれたのはこの当直のときのできごとである。

 女性の先生にも当直の割り当てがあったのかどうかは定かではない。多分、なかったのだろう。それはさておき、

 担任が当直のときに遊びに来るように誘われることもある。その夜は、学校ではしないような話題が出てくる。具体的なことは何も覚えていないが、人生論的な話もあったような気がする。むろん、遊びに行った生徒が一緒に泊まるわけにはいかない。夜遅くに帰らねばならない。といっても、七時、八時ごろではあるが。が、当時の七時、八時は真っ暗だった。いまと違って過保護ではないから親が迎えに来るようなことはない。なので、暗い道を怖がりながらとぼとぼと歩いて帰る。これがなければ、もっと頻繁にいったかもしれない。怖いので、誘われても大概は断っていた。

 いまは当直なんて制度はなくなったのだろうな。警備は先生が担当するのではなく、警備会社に任せる。先生にとっては負担が減り、大助かりであろう。だけど、第三者としてはなんとなく寂しい気もする。