セメンダイン

 簡単な工作ができるようになったころ、使っていた糊は多分ヤマト糊。丸い蓋付きの容器に入っていた。黄色いチューブ入りが出たのはかなり後だったように思う。この糊、普通に紙を貼り合わせるのには問題なかったが、接着力があまり強くなく、使いかたによってはうまくつかなかった。

 たとえば、当時の工作の定番だった、紙を切り取り、折り曲げ、糊代を貼り合わせて立体的な形を作るような場合。糊代は小さくまた折り曲げて貼り合わせるため、外れようとする力が働いてすぐに剥がれてしまう。うまくつかなくて、そこらじゅう糊でべたべたにしてしまうことしばしば。

 そのあと登場したのがセメンダイン。黄色の金属チューブ入り。口から透明の接着剤が出てくる。ツンとくる匂い。見るからに接着力がありそうだ。これなら小さな糊代でも大丈夫。厚紙を立てて貼ることも可能となった。また、新聞のスクラップなどを貼るときも、ヤマト糊と違って湿り気がないのでシワになることなく貼ることができた。

 ただし、当然ながら、ヤマト糊より高価。なので、用途に応じて棲み分けていた。

 その後、ボンドが登場し木工の場から徐々にシェアを広げていった。また、二液製のエポキシ系や、アロンアルファの瞬間接着剤などが現れ、糊付けの範囲を拡大していった。手を汚さないスティック糊はヤマト糊の肩身を狭くしてしまった。

 糊の世界でも時代は遷移している。