実はできなかった

 懐かしの昭和で定番的に取り上げられる子ども遊び。見ていると懐かしく子どものころに帰って行く。と、言いたいところだが、実はまったくそうでない。懐かしくもなんともない。なぜならば、実はそのほとんどはやったことがなかったからである。

 ベーゴマ、メンコ、ビー玉、コマ回し、たこ揚げ、川釣り、……。

 そもそも、ギャンブルは嫌いだった。いや、今も嫌いだ。だから、ベーゴマ、メンコ、ビー玉などの取ったり取られたりの遊びに加わることができなかった。

 そうなると、ほかの遊びからも遠ざかってしまう。コマ回し、たこ揚げなども小さいころからやっていないと、なかなか手を出す気にならない。そこそこの歳なのにできない。そうなると、できないことを知られたくない。だからやらない。

 もうひとつ。当時は、毎日お小遣いをもらう子が多かったようだが、わが家は月ぎめだった。毎日であれば、その日に使い切っても次の日にはまたもらえる。だから、憂いないくお小遣いを使うことができた。額は少なかろうと、安心して使うことができた。ところが月ぎめとなるとそうはいかない。使い切ってしまうと次の月まで無一文で待たねばならない。自然に財布の口が堅くなる。計画経済とか言うのではなくて、単に無一文が怖いだけである。

 といったような分析ができるのは、今になってから。当時は、なんとも付き合いの悪い子どもであった。