万能薬

 かつては万能薬というものがあった。なんにでも効く薬である。

 古くは葛根湯。これは内科にも外科にも効く万能薬と思われていた。病状がわからない時はとりあえず葛根湯を処方する医者もあったとか(落語の話ですが)。

 昭和の万能薬はメンソレータム。近江兄弟(けいてい)社の商品である。その後、販売権はロート製薬に移ったが、元祖の近江兄弟も、その愛称メンタムを商品名として同じ品を提供し続けている。

 メンソールの入った外用薬である。切り傷、擦り傷、消毒、やけど、肩凝り、……。怪我にはなんでもメンソレータムである。

 まあ、病は気から、の(逆の)口であろう。メンソレータムを塗って、それで安心できるならそれで良いのかも知れない。別に害はなさそうだし、傷そのものも大したことはないのだろうから、気が休まればそれで良かったのかもしれない。

 なお、わたくしめはいまもなお、鼻づまりの対処薬として、メンタムを鼻の中に塗ったりしています(笑)

 わたしはもうひとつ万能薬があります。それはイソジン。うがい薬として売られていますが、わたしはこれを消毒薬としても使っています。消毒目的で、原液やら水でちょこっと薄めた液をベタベタと塗りつけています。ただし、色がつくので、しばらくしてから風呂で洗い流しています。

 ちなみに、月面着陸したアポロの飛行士が月の石を持ち帰る際に使用した消毒液はイソジンだそうです。これを知って、わたしも消毒液として使うようになりました。